人形作家として非常にクオリティの高い仕事をしているとくいあやは、
近年自身の身体感覚と向き合う中でよりパーソナルなものづくりを続ける。
人や動物のからだの組成をミクロの視点から見つめるおおらかさと、
自分も生き物として形作られているというおぞましさを抱きながら、
その手を動かしつつ自分の中に潜む違和感を消化してゆく。
そうして生まれたのは、肌や衣服、自他や内外という境界の曖昧な人形たち。
その存在の希薄さは逆に強い存在感へとつながっている。
彼らは何者でもないという不安と安心を両方抱えているように見える。
それは日常や異国での一人旅でたゆたうわれわれの姿と似ている。
(gallery yolcha イルボン)–
ずいぶん前ですが買った春菊から出てきたかたつむりと
暮らしていたことがあります。
ある時、音を何もつけないで作業していたら
シャリシャリシャリと微かな(気のせいかと思うほど微かな)音が聞こえてきました。
それはかたつむりがキャベツを削って食べていた音でした。
毎日同じ部屋にいたのに聞こえていなかったその音に、ドキッとしました。
布から人形が少しずつ出てきて、出来上がるまでの間、
針が重なるごとにたくさんの人が現れては、あっという間に消えていきます。
完成した人形のまわりには、日々違う、いろんな小さな音があるけれど
できることならあの時確かにあった、消えていった人たちの音も、
聞こえたらいいなと思いながら手を動かしています。
(とくいあや)とくいあや|TOKUI Aya
石川県生まれ・在住。
高校時代、家にこもってテディベア作りに夢中になりました。
今もその延長で人形や生きものをつくっています。
とくいあや 個展「かたつむりの歯」
会期:2024年10月5日(土)〜11月4日(月・祝)
時間:13:00~19:00(日曜のみ12:00~19:00)
休廊:⽕〜⽊曜、10月25日(金)〜28日(月)
料金: yolcha運賃制(300円でチケットを購入/同金額分カフェ利用可)
大阪市北区豊崎1-1-14