御村紗也は1997年三重県に生まれ、2022年京都芸術大学大学院修士課程を卒業後、現在も三重県を拠点に制作を続けています。
御村は日常の風景で何気なく目に留まった風景や場所を写真やドローイングとしてストックし、その空間に存在した視覚的にはとらえられない温度や香り、光の揺らぎといった「刹那的な時間や情景」をモチーフとしてシルクスクリーンやペインティングを制作します。現代の生活では目で見たものを写真や動画として記録し保存することが容易である反面、データ化されたそれらと体験としての記憶が同一のものであるとは断言できません。作家にとって、記録されたデータには掬いきれない、確固とした姿かたちを持たず、それでも自身の記憶の中で煌めいていた何かをつなぎとめる手段が、絵を描くことであるといいます。
本展は「Charm」と題し、御村の最新作を含む13点を展示します。この機会にぜひご高覧ください。―作家ステイトメント―
以前、離島を訪れた。綺麗な海の浜辺にきらきらした石や貝や何かの欠片が落ちている。白い砂浜に反射する眩しさ、澄んだ海の見慣れない色、湿った空気、波の音が聞こえる中、綺麗な欠片を見つけて、ときめき、持ち帰りたくなる。しかし、その地域では環境維持のため、自然にあるものを移動させてはいけないルールがある。だから、せめてもと欠片をスマホで写真に収めてみたが、その良さは思った以上に写らず、私がこの欠片をスマホに収めたところで、本質の何%を記憶できたのだろうかと急に現実に戻されるような感覚になった。とある一日がそうで、普段の日々でも似たことを繰り返している。些細な現象を見つけては、それを含む空間と時間の尊さについて考えている。それは、私にとって、理不尽で無力に感じる現実からの逃避でもあり、対峙でもある。目に見えることと見えないことで構成され意図せずできた現象と、その現象の一部となった私/あなたは、浜辺の一時と同じ存在になり得る。
私は、そういった存在を手に取れる形に残し、示す方法として絵画を制作する。消失に対する焦燥感を持ちながら、泡沫の香りのように触れられない存在を、線や色彩のレイヤー、絵肌をもって表現することを追い求めている。
何の変哲もないと思っていた存在が意味を持つ瞬間をつくることができれば、現実の何かの手立てとなる可能性があると信じている。
会期:2024年10月11日(金)〜11月2日(土)
※10月11日(金)、12日(土)は作家が在廊予定会場:N project
時間:月〜金曜 10:00〜17:00、土曜 11:00〜18:00
休廊:日曜・祝日
問合:06-6362-1038
大阪市北区西天満5-8-8 2F