
谷町六丁目のギャラリー・+1artにて、展覧会「影の中の楽園―デレク・ジャーマンの庭」が開催される。
デレク・ジャーマン(1942~94)は、映画監督、舞台デザイナー、画家、園芸家として20世紀のアートシーンに独自の地位を確立したアーティスト。1986年に、原子力発電所と荒涼とした海岸線をもつイギリス南東部の海辺の町・ダンジネス(Dungeness)を偶然通りかかり、気に入って住み始めた。 デレクは1994年にエイズ合併症で死去するまでの数年をダンジネスのコテージに暮らし、病と闘いながら庭をつくり映像作品を制作していた。
当時イギリスを拠点に活動していた写真家・奥宮誠次は、デレクが「プロスペクト・コテージ」と名付けて住んだダンジネスのコテージを度々訪れ、彼の晩年の4年間を撮影。奥宮の写真は、デレクの死後、ロンドンのバービカンセンターで催されるデレク・ジャーマン回顧展に出展される予定だったが、奥宮がその準備のために貸与したネガ、ポジ等の全てが紛失するという不運に見舞われた。
本展は、奥宮誠次の手元に残されたデレク・ジャーマンの庭の写真約12点と、池田啓子によるインスタレーションで空間を構成。
また、デレク・ジャーマンに深い関心を寄せる藤本由紀夫が、展示空間に音を加える。
それは1989年のこと。私は、初めてプロスペクトコテージを訪ねた時のことを今でも鮮明に覚えている。デレクに会えることにワクワクし、そして彼の風変わりな庭に魅了された。1986年、彼はHIVに罹ったことをきっかけにダンジネスに住むようになった。彼はこの荒廃した地に庭を造ることは挑戦だと言う。海岸の石や貝殻、流木、死に向かっている物を集めて、アートオブジェとして復活させ、楽園を造ろうとしていたのだ。彼はある日「できるだけ早く描きたいんだ。ボクにはもうあまり時間がないからね」と。 画筆は使わず手の平に絵の具をとり、その色彩が指から直接キャンバスに。私は夢中でシャッターを切り続けた。
(奧宮誠次)今回の展覧会では境界を主に置き、鏡・言葉を素材を施作した。鏡による作品は、境界線である窓の内側に置かれた鏡が外の景色を映し出し、内と外の境界をぼかし曖昧な空間を作る。また、空間に配置されたオーガンジーの布の上に印字された52文字。この文字はダンジネスの景色、彼の庭の植物、映画ブルー作品のなかでの呟きなど、意味のない言葉である。そして空間内に吊るされた布は境界線を曖昧にする役割を担っている。
(池田啓子)
影の中の楽園―デレク・ジャーマンの庭
Eden in the Shadow of Dungeness-Derek Jarman’s Garden
奥宮誠次・池田啓子 | 協力:藤本由紀夫会期:2025年10月29日(水)~11月15日(土)
会場:+1art
時間:12:00〜19:00(最終日は〜17:00)
休廊:日〜火曜
料金:入場無料
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日時:11月1日(土)17:00〜
会場:+1art
登壇:奥宮誠次、池田啓子、藤本由紀夫
参加費:500円
定員:20名 ※予約優先。申込先:gal@plus1art.jp問合:06-7712-6685
大阪市中央区谷町6-4-40



