
2025年11月15日(土)より、南堀江のTEZUKAYAMA GALLERYにて、ユ・ソラ個展「傘は玄関、眼鏡は枕元」が開催される。
ユ・ソラは1987年韓国・京畿道生まれ。2011年に弘益大学彫塑科を卒業後、2020年に東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程を修了。 現在は日本を拠点に活動している。
鍵、食器、家具など、日常的な物品や空間を題材に、白い布に黒い糸で刺繍を施して作品を制作。それぞれの形や質感を通して、時間や記憶、人の存在の痕跡を繊細に描き出す。
本展のタイトルである「傘は玄関、眼鏡は枕元」は、日常の部屋に潜む「安心」と「不安」という2つの感覚に対するユ・ソラの関心を映し出している。
アーティスト・ステイトメント
大学入学を機に家族と離れ、ソウルの古い半地下の部屋で一人暮らしを始めた。リサイクルショップで揃えた古い家電と小学生の頃から使い続けてきた机。20歳なりの悩みはあったけれど、夢と幸せが溢れる部屋だった。その部屋が好きで、そこにいる自分のことが好きで部屋の中を描き始めた。
居心地のよい部屋のかたちは人それぞれ。ベッドや椅子の上に物が積まれていても床がきれいなら落ち着く人もいれば、床には物があっても机の上は整っていなければ落ち着かないという人もいる。私が描く日常が主に「家の中」のものに限られているのは、自分にとって最も安心できる場所だと思ったから。夜遅く帰って朝早く仕事に出る人でも、家は人を受け入れ、緊張をほどく空間である。気持ちがささくれたり、不安を抱えたりする日には、部屋の中も乱れてしまう。散らかった部屋を片付けると、少し心が落ち着くことがある。
「安堵」と「安心」を形にすると、それぞれの人にとっての「部屋」になるのではないかと思っている。私はそんな「安心」である部屋を描き始めたが、いつからか「不安」を語っている。
人の命や日常が突然消えてしまうという出来事は、世界のどこかで、あるいはすぐそばで今も起きている。災害、事故、感染症、戦争ーそれらは人の力では抗えない。自分自身にも、いつ何が起こるかわからないという恐れと不安は、ずっと胸の底に沈んでいる。子どもが生まれ、守りたい幸せが増えた分、恐れも倍になった。時々、ほんの小さなことでも不安は浮かんで来て日常を揺らす。いつも同じ顔、同じ場所で自分を待っていると思った日常は、まるで紙でできた建物のように脆いものだった。
今は自分の部屋を描くより、どこにでもあるような部屋の風景を探している。誰もが自分の日常を重ねられるように、色を使わず、どこかの誰かが「いつもどおり」に繰り返していることについて考えた。傘は玄関、眼鏡は枕元に。くしゃくしゃのレシートや洗濯バサミが転がっていて、読まずに積み重ねた本の上にものが乗っている。「みんな、同じだね」と、少し安心する一方で、部屋の輪郭を縁取る糸は、人が近づくとわずかに揺れ、もし間違えて引っ張ってしまえば、すべてが真っ白に消えてしまいそうな危うさも同時に宿している。人によって不安の大きさも、その感じ方も違って、この白い部屋の中で「安心」だけを見つける人もいる。
どうしても消えないものであれば、私はその不安と向き合い、目を合わせ、手を繋ごうと思う。不安と安心をうまく付き合わせようと思う。同じような不安を抱えて生きる人々と、少しでも分かり合えたらと。そんな思いで、白い部屋を作り続けている。
ユ・ソラ
会期:2025年11月15日(土)〜12月13日(土)
会場:TEZUKAYAMA GALLERY Viewing Room
時間:12:00~19:00
休廊:日・月曜、祝日
ギャラリートーク
日時:11月15日(土)12:00〜13:00
登壇:木村 絵理子(キュレーター、弘前れんが倉庫美術館館長)、ユ・ソラ(アーティスト)
大阪市西区南堀江1-19-27
山崎ビル2F





