ドラマとドキュメンタリーの境界を越えて斬新な作品を世に送り出し、国内外の映画祭で⾼い評価を受けている中村真⼣監督の最新作『親密な他⼈』が、十三の第七藝術劇場にて上映される。
中村は2006年、⾼良健吾の映画デビュー作『ハリヨの夏』で監督デビュー。福島の原発20キロ圏内にたった⼀⼈で残り、動物たちと暮す男性を追ったドキュメンタリー映画『ナオトひとりっきり』(2014年)や、政治活動家・鈴木邦男に2年間密着しその素顔を描いた『愛国者に気をつけろ 鈴⽊邦男』(2020年)など、独⾃の視点で現代社会の影を⾒つめてきた。
デビュー作以来の⻑編劇映画にして監督初のスリラー作品となる本作では、ある⽇突然⾏⽅不明になってしまった最愛の息⼦の帰りを待つシングルマザーと、息⼦の情報があると⾔って彼⼥の前に現れた20歳の謎の⻘年の不思議な関係を描く。コロナ禍でも増加し続ける特殊詐欺をフックとして⽇本社会における⺟性のあり⽅について問いかけると同時に、⼈と⼈の関係を引き剥がす未曾有のパンデミックがいかに⼈々の意識を変容させたかを感じさせる作品となっている。
私がこの映画で描こうと試みたのは、⽇本の⺟親の包みこむような温かさと、のみこむような怖さだ。14年、イギリスとアメリカで過ごし、⽇本に帰ってきて⼀番衝撃的だったのは、⽇本の⺟親の⼦ども(特に息⼦)に対する並々ならぬ愛情の注ぎ⽅と、執着だった。それはある意味、⽇本だけでなく、韓国や中国にも共通するアジア的なものかもしれない。
この映画では、依存し愛し過ぎるが故に、親子関係がいびつになっていく状況を、ミステリーを絡めた物語にした。⽇本だけでなく欧⽶でも、⺟親は神聖なものとして扱われることが多いが、そうではない悪⼥性も同時に表現できればと考えている。⺟性と⼥性の間でゆれながら、⽣きるリアルな⼥性を、これからも映画の中で描きたいと考えている。‒‒中村真⼣
期間:2022年4月16日(土)〜 *初日に監督舞台挨拶予定
会場:第七藝術劇場
料金:一般1,800円/シニア1,200円/学生1,000円/小学生以下700円/会員1,000円
全国共通特別鑑賞券(前売券)1,500円、その他 劇場規定の割引・サービスデー適用あり*上映スケジュール、料金等の詳細は劇場Webサイト参照
映画『親密な他人』(⽇本/カラー/96分)
監督・脚本:中村真夕
出演:黒沢あすか、神尾楓珠、上村侑、尚玄、佐野史郎、丘みつ子
撮影:辻智彦
音楽:新垣隆
大阪市淀川区十三本町1-7-27
サンポードシティ6F