西天満のYOD Galleryにて、塩原有佳・水戸部七絵の2人展「傑作な風景」が開催される。
塩原有佳は1985年茨城県生まれ。2008年名古屋造形大学洋画コース修了。極端な色使いやさまざまな文化圏の装飾要素で構成した絵画を制作している。「シェル美術賞2020」入選、「VOCA展2022」に出品。
水戸部七絵は神奈川県生まれ。2011年名古屋造形大学卒業、現在は東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画に在籍、「顔」をテーマとした大スケールの絵画シリーズ「DEPTH」に取り組む。「VOCA展2021」でVOCA奨励賞受賞。2022年には、東京オペラシティProject Nで個展を開催予定。
塩原と水戸部は、現在千葉の同じアトリエ内で制作を行っている。全く異なるアプローチで絵画を描く2人が、本展では「傑作な風景」という共通のテーマのもとに作品を発表。2人の共通項が見出される展示となりそうだ。
展覧会コンセプト
『傑作(けっさく)』は、非常に優れた作品のことで、中国語でも日本語でも、そういう意味で古来用いられた言葉である [2]。
ただし、日本語ではそれから派生して、言動が突飛で滑稽な意味で用いることもある 傑作は、名作や代表作などとともに、ヨーロッパのマスターピースの訳語として用いられる場合がある。 (Wikipedia 「傑作」より)『傑作』と言われて思い浮かぶのはやはり何世紀も前の巨匠達の作品であり、現代において特に現代美術という枠組みの中では、誰かが何かを作ることの唯一性、即ち1人の才能ある作家が『傑作』を作るということ自体があまり重要な意味を持たなくなってきている。
本展では所謂絵画の名作、巨匠達が描いてきた傑作をそれぞれの作家が独自の解釈で引用し、現代における『傑作』の意味を再定義する。
絵画は何をどのように引用するか、その時代時代で常に変化してきた。 既に生み出されてきた先代の方法や時には模写として描き写すことで絵画の文脈は進行していく。
例えば西洋絵画における宗教画であればギリシャ神話や聖書における重要なシーン(受胎告知や最後の晩餐、等々)をそれぞれの作家が同じ物語から想像をし、構図や視点を変える事で如何に効果的にその場面を伝えるかを試行錯誤していった。
これは物語からの引用や既に描かれた先代の絵画からの引用である。
この様に長きに渡る絵画の歴史の中で、アカデミックに模写をする事に始まり、何かしらを引用することが必須とも言える。
『引用』と一口に言っても、先に述べた伝統的なものばかりではなく、近代から現代おいては広告やインターネット等の既存の素材を意図的に使用する『アプロプリエーション』と呼ばれる手法もあり、その方法は多岐に渡る。
1985年にニューヨークで誕生したゴリラのマスクをかぶる匿名のアクティヴィスト集団、ゲリラ・ガールズはアングルの『グランド・オダリスク』の裸婦像を描いた絵画に、彼女達の象徴のゴリラのマスクを被せ、その横に《Do woman have to be naked to get into the MET.Museum?(メットに入るには、女性は裸にならねばならないの?)》 (1989)とアート界の女性蔑視を皮肉めいてポスターにしており、強いメッセージと共に引用されたイメージはビルボードやチラシ等を利用する事で公の場に介入し、場所性も重要視された作品である。
本展を開催するYOD Gallery近くを流れる堂島川沿いの南部には、大阪高等裁判所などの官公庁やオフィスビルが立地する一方、西は北新地、北は兎我野町など北野の歓楽街に隣接している。(Wikipedia 「西天満」より)
オフィスビルから歓楽街まで雑多におり混ざったこの場所は普段共にスタジオを共有しながらも全く異なる方向性で制作を進めている2人の状況にどこか似ている。全く異なる方向性とは述べたが共通項も存在する。
それはある種の過剰さであり水戸部の場合それが絵の具の質量であり、時にそれは物質感を持って空間を侵食する。それに対し塩原は絵画表面の質感に対しての過剰さが見た目の平面さに反して奥行きを持って存在する。
方向性の異なる二つの過剰性を持った作品を傑作の引用という共通のテーマを持って同居させる事で、プロモーションに溢れる混沌が同居する世の中の縮図を再現し、巨匠のいない現代に『傑作』を利用した『傑作な風景』を展開する。(Instagramより)
会期:2022年5月14日(土)〜6月4日(土)
会場:YOD Gallery
時間:13:00~19:00
休館:日曜日
問合:06-6364-0775 info@yodgallery.com
大阪市北区西天満4-9-15
第一神明ビル1F