境界をあるく美術家。
わたしは、風景画という絵画のいち形態を端緒として「風景のなかにみた色を再現する」というひとつの行為を選択し、現代における風景画とは何なのかその意味について考えつづけている。
実際に触れた日常の出来事や風景の記録写真をモザイクに加工し、色の情報だけを抜き出し、忠実に絵の具でドットを描いていく。実際にあるくアナログの行為、デジタルをとおして処理された情報、そしてまた自分の手をとおして再現される色。果たして「色をつくる(mix)」「塗る(paint)」「描写する(depict)」に解体された風景画は何を意味し、観賞者はそれをどのように観るだろうか。
解体され抽象化された風景画は、それを読み解く時間をかけて観る者に情報以上のものを伝えられるのではないかと思う。絵の具や帆布の物質性や筆致、作家の身体性という些細な現象を含んだうえでの別のなにか。それは、余分を削ぎ落とした絵画を前に際立つ、観る者の想像する力だ。
リアルとアブストラクト、アナログとデジタル、フィジカルとバーチャル。その境界線を行き来し、パンデミック後の私たちの「世界をあるく」手法のバリエーションを静かに検証するようでもあるが、作者の見た風景はどんなものなのかと想像するなかで、観賞者に絵の意味や自分の美の感覚、そしてまたそのひと固有の世界を思い出させる媒体としての作品になればと願う。
わにぶちみき
www.mikiwanibuchi.comプロフィール
1981年大阪府生まれ。現在、大阪を拠点に制作活動中。
2012年英国ボーンマス芸術大学大学院美術修士課程修了。国内外での個展、グループ展、アートフェアなどで作品を発表している。
2016年第5回500m美術館賞グランプリ受賞。
MIKI WANIBUCHI SOLO EXHIBITION[FUKEI 風景]
会期:2023年2月6日 (月)~18日(土)
会場:gekilin.
時間:11:00~19:00 土・日曜 ~17:00
休廊:水曜
大阪市北区西天満4-3-3
星光ビル4F