
中之島の国立国際美術館にて、2025年6月28日(土)〜10月5日(日)まで、特別展「非常の常」が開催される。
私たちは今、常態化した非常事態を生きています。
理不尽な攻撃や突然のクーデター、地震、洪水、山火事などの自然災害によって、多くの人々が住む場所を失い、強制的な移住を余儀なくされています。未知のウイルスが突如私たちの生命を脅かした経験は記憶に新しく、それによる政治的混乱、人間関係の分断、日常の喪失は、今なお日々の暮らしに影を落としています。
生成AI など人工知能を含むテクノロジーが飛躍的に発達し、私たちが目にするイメージや情報の真正性の判断は、時に極めて困難になりました。さらに、情報の流通が複雑なアルゴリズムに支配され、サイバー空間での攻撃がいよいよ本格化したこの超高度情報化社会では、誰もが生の根底に不安を抱き、焦燥感や拠りどころのなさを抱えています。
こうした「非常の常」の時代を、私たちはどのように生きることができるのでしょうか。本展では、8名の作家の表現を通じて、時代を見つめ、想像力を膨らませ、明日を生きる希望を探ります。
(本展プレスリリースより)
出品作家は、シプリアン・ガイヤール、潘逸舟、クゥワイ・サムナン、キム・アヨン、リー・キット、高橋喜代史、米田知子、袁廣鳴。
一見穏やかな風景のようだが、休戦状態で今も緊張が続く韓国と北朝鮮の間の非武装地帯(DMZ)で撮影された米田知子の写真作品、精霊を召喚するパフォーマンスで環境問題を鋭く批評するクゥワイ・サムナンの映像インスタレーション作品など、それぞれの作家が、いま地球上で起きている混乱をとらえ表現する。
また、8作家中7作家の作品が映像によるインスタレーション作品である点も本展の特徴だ。3Dアニメーションと実写を組み合わせた短編映画のような映像で観客を魅了するキム・アヨン、作家自身による体当たりの行為を美しいモノクロ表現で見せる潘逸舟、作家の等身大のコミュニケーションを元にした映像作品を通じて、社会が抱える難題にアプローチする手がかりを探る高橋喜代史など、多様な映像表現に触れることができる。
袁廣鳴が2024年のヴェネチア・ビエンナーレ台湾館のために制作・発表した話題作《日常戦争》や、アルス・エレクトロニカ賞のニュー・アニメーション・アート部門にて2023年にゴールデン・ニカ賞(グランプリ)を受賞したキム・アヨン《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》など、国立国際美術館に2024年度に収蔵され初披露となる作品にも注目したい。
会期:2025年6月28日(土)〜10月5日(日)
会場:国立国際美術館 地下3階展示室
出品作家:
シプリアン・ガイヤール(1980年生まれ、ドイツ/フランス拠点)
潘逸舟(1987年生まれ、日本拠点)
クゥワイ・サムナン(1982年生まれ、カンボジア拠点)
キム・アヨン(1979年生まれ、韓国拠点)
リー・キット(1978年生まれ、台湾拠点)
高橋喜代史(1974年生まれ、日本拠点)
米田知子(1965年生まれ、イギリス拠点)
袁廣鳴(ユェン・グァンミン)(1965年生まれ、台湾拠点)時間:10:00〜17:00、金曜・土曜は20:00 まで ※入場は閉館の30分前まで
休館:月曜(ただし7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日(火)、8月12日(火)、9月16日(火)
観覧料:一般1,500円、大学生900円
※高校生以下・18歳未満無料(要証明)・心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)
※本展料金で、同時開催のコレクション展も鑑賞可能関連イベント
高橋喜代史《フリー・スイカ・バー》パフォーマンス
日時:6月28日(土)、10月5日(日)いずれも14:00 より
(終了時間未定、ただし最長17:00 まで)
会場:国立国際美術館正面玄関前 ※雨天の場合、内容を変更し館内で実施
参加費:無料
参加者にはスイカジュースを配布。トーク・イベント「非常の時代のアテンション」
日時:8月3日(日)14:00〜16:00( 予定)
会場:国立国際美術館 地下1階講堂
登壇者:岡田温司(京都大学名誉教授)、石谷治寛(広島市立大学芸術学部准教授)、
大木美智子(ロンドン大学専任上級講師)、橋本 梓(本展企画担当、国立国際美術館主任研究員)
参加費:無料
定員:100名 ※当日10:00 から地下1階インフォメーションにて整理券を配布(1人1枚)ドキュ・アッタンシアター#大阪
日時:8月24日(日)14:00〜16:00(予定)
会場:国立国際美術館 地下1階講堂
定員:100 名 ※当日10:00 から地下1階インフォメーションにて整理券を配布(1人1枚)
企画協力:ドキュ・アッタン
ミャンマーでは2021 年の軍によるクーデター以後、多くのジャーナリストやアーティストが国を追われ、命を奪われる状況にあります。
ドキュ・アッタン(Docu Athan)は、ミャンマーで拘束された経験を持つジャーナリストの北角裕樹とドキュメンタリー作家の久保田徹の発案から生まれた、ミャンマー人のクリエイター(ジャーナリスト/ 映像制作者/ アーティストなど)支援のためのオンラインプラットフォームです。アッタンはミャンマー語で声や意見を意味します。
オンラインプラットフォームのみならず、上映会を開催して作品を日本に紹介するなど、さまざまなかたちで制作を支えることで、ミャンマーのクリエイターたちが集う場としての役割を果たすことも目的としています。ウェブサイトでは作品を無料で視聴できるほか、クリエイターに寄付を行うことができる仕組みが設けられています。
今回の上映会では、ミャンマーのクリエイターたちによる映像作品の上映会 に加え、2025年3月28日に発生したミャンマー地震での現地の様子についても報告する貴重な機会となります。展覧会見どころ解説
日時:9月15日(月・祝)14:00〜15:00(予定)
会場:国立国際美術館 地下1階講堂
講師:橋本 梓(本展企画担当、国立国際美術館主任研究員)
参加費:無料
定員:100名問合:06-6447-4680(代表)
大阪市北区中之島4-2-55