年一度の開催で、ついに今年で24回目を迎える「ART OSAKA」。梅田のグラングリーン大阪では52ギャラリーが参加してのアートフェアが行われ、北加賀屋のクリエイティブセンター大阪で13組の作家が展示を行う本年、それに加えてちょっと異色なイベント企画がラインナップされている。その名も「ムラタカイワイ アメ村今昔」。このイベントを企画、主催するFUKUGAN GALLERYの村田典子さんに話を聞いた。
なお、FUKUGAN GALLERYは、1998年にアメリカ村のビル内にオープンしたギャラリーで、2005年には現在地のビル4階へ移転。現在のビル1階では角打ちの「村田酒店」が営業している。ふたつのビルの距離は徒歩30秒ほど。記事内では前ビル、現ビルと呼びますね。
ムラタカイワイと村田酒店の謎
——早速ですが、どうして「ムラタカイワイ」を開催することに?
村田:このところはART OSAKAの出展を断ってたんです。2014年くらいまでは出してたけど、だんだん出展料も高くなってきたし、うちはそこまでばりばりと売るような作品も扱ってないから。けど、中堅どころの大阪のギャラリーが減っているみたいで、なんとか出てほしい、大阪らしいアートフェアにしたいという話のなかで、じゃあ、クリエイティブセンター大阪の「STUDIO PARTITA」を使えるならやりましょうかって。あの場所だったらライブもできるので。
——2会場開催になってからのART OSAKAでは、クリエイティブセンター大阪は主に大型作品が展示される場になってますが、STUDIO PARTITAは建物が別なんですよね。
村田:昨年はMORI YU GALLERYさんが音を扱う作家さんの作品インスタレーションの展示に使ってましたね。
——それにしてもギャラリーごとに作品を展示して販売するアートフェアで、大阪らしさを出すってなかなか難しそう。
村田:ART OSAKAをホテルの客室でやってた頃は、部屋のなかをギャラリーや作家のカラーにつくり込むこともできたから、やり方次第では個性を出しやすかったですけど……、そういえば、ホテルの廊下を使ってファッションショーを勝手にやったら怒られたこともありましたね。
アートフェアなんだから、きちんと作品が見られるようになっていればいいのかもしれないけど、私ができることで大阪らしさを考えた結果が、ぐちゃっと雑多なものが集まった企画なのかもしれないなって。
——しかも、それを思い切りよく「ムラタカイワイ」と名付けて。
村田:ムラタと言っても私じゃなくて、1階の立ち飲みの村田酒店のことですよ。そこの元常連さんがこのビルのテナントにレコード店として入ってくれてたり(昨年7月にオープンした「ブルジョンレコード」)、相方も酒店の常連だったし(轟音ノイズのユニット、SOLMANIAで活動する大野雅彦さん)、いろんなことのスタート地点にはなっていると思ってます。アートフェアにかこつけてはいるけれど、どちらかといえばアートというよりは、その立ち飲み界隈で生まれた人たちの交流が面白いのでそれを表に出してみるという感じかも。

——その村田酒店といえば、アメ村どまんなかに残る角打ちとして評判の一方で、会員制の札もあって一般にオープンな店ではないですよね。
村田:入りづらいですよね。私も入りづらいから(笑)。取材もすべて断ってるし。あそこは私が生まれる前におじいちゃんがはじめた店で、物心つく頃にはたくさんのお客さんであふれてました。自分の家がそこだったから、なるべく関わりがないように、声をかけられないようにそっと素通りする場所だった。それを父が引き継いで、けど、90年代かな、一度大きな病気をしてからお客さんが多すぎるのもしんどいというので、会員制という札をつくらされて。昔の賑わってた頃から通いつづけてる人にとっては、やっぱり今でも「あそこは聖地みたいな場所だ」って言われますね。

村田さんが幼少期の頃の村田酒店前の様子 
村田さんが幼少期の頃の村田酒店前の様子
——やっぱり好きな人は好きな店。今のアメ村に昔気質の角打ちがそのまま残ってるってすごいことですし。
村田:そう、好きな人には「やめたらあかんよ」ってしきりに言われるけど、今のままでどうするのかなっていうね。昔は音楽関係者とアパレル系の人が半々くらいでぎゅうぎゅうって感じだったけど、今はお客さんは減ってるし、私が飲まないし、ほかの立ち飲みに行かないからさっぱりそのへんはわからなくて。
——FUKUGAN GALLERYで何度も展示をしている水内義人さんの個展というか企画を、1階の酒店でやっていたことがありましたよね。
村田:ゴールデンウィークで店が休みの間に使わせてもらって、すごく面白いことになったけど、もう二度と使わせないとも言われていて。父にとっては自分がいないうちに荒らされるみたいな感じだったかも。とにかく、父の目が黒いうちは勝手なことはできない場所なんです。
——じゃあ、今回の「ムラタカイワイ」についてはお父さんにどう説明されたんですか。
村田:ややこしいから言ってない(笑)。けど、つくってたチラシが見つかって、あ、ばれたなって。そしたら、店の前にポスター貼ってくれてたし、どうも自分の中学時代の同級生にチラシを配ったりしてるみたいなんで、どうやら大丈夫そう。
——どこかに親孝行という気持ちもありますか。
村田:いや~どうでしょう。それこそ、この界隈では村田酒店の娘やと言われ続けて、私には関係ないと言い張ってきたけど、そのことを引き受ける気持ちにはなってきたかな。物心ついたときから店の裏方は家族総出で手伝っていましたが、今は母と姉が手伝っていて、私はもっぱら経理やテナントさんのつなぎや設備系の手伝いで、店はノータッチでしたね。
まずありえない顔合わせのライブ企画も
——「ムラタカイワイ」の具体的な内容についても聞かせてください。ギャラリーでこれまで展覧会を開いてきた作家だけでなくて、何人か新しい人の名前も見られますね。
村田:CASPERさんは村田酒店の元常連で、店のシャッターにもグラフティを描いてもらってます。池島勘次郎さんは、独立美術協会に所属して中之島美術館や国立国際美術館にも作品が所蔵されている画家ですけど、この町内で活動していて、父の弟も子どもの頃、そのアトリエに通っていたそうで。御津八幡神社や地区会館にも池島さんの作品が飾られていて、三角公園にある交番にも作品があると聞きました。少し前に池島さんの教え子の方からまとまって寄贈を受けたので、その作品を紹介します。
——まさにアメ村ゆかりの作家という感じですね。リサーチをベースに制作される冬木遼太郎さんもFUKUGANでは初めてですね。
村田:冬木さんは学生の頃にこの町によく服やレコードを買いにきてたそうで、その記憶をベースに制作できるかもしれないということで、いろいろリサーチを進めていて、うちの3軒隣りにいる地区の長老的な人のところにも話を聞きに行ったりしました。生まれてから一度もアメ村を出てないという方で。今回はそういったリサーチの途中経過を報告するようなものになりそうです。
——アメ村って繁華街で観光地ですけど、当たり前のようにずっと暮らしてきた人もいれば、池島さんの絵のように受け継がれてきたものもあるんですよね。ちょっと歩くだけではなかなか見えづらいことですけど。
村田:外の人からしたら、よその町内の話なので知らなくてもいいかもですが。雑居ビルの老舗の店なんかはマニアックな親戚みたいにお客さんとも長いお付き合いもあったりで。外から通ってたという人とこの町も想いはいろいろつながっていて、アメ村の文化はつながっているのかなと。うちのギャラリーも、路面店でもないから普通は入りづらい場所ですが、今回の企画が少しでも多種多様な人の出会いの機会になればと思ってます。

——「ムラタカイワイ」への出店は、現ビル、旧ビルに入っている店舗が中心で、これまでビルのなかまで入っていけなかったという人にとっていい機会になりそうです。で、ライブですが、31日は人気の4組(MeNeM、水内義人、オシリペンペンズとKA4U)ですけど、30日が謎だなって。ベリーダンスのHirocoさんというのは?
村田:近所のビッグステップに入ってるスポーツジムに長年家族で加入していて、私も週3で通っているのですが、そこのダンスレッスンの先生です。ちなみに、昼にダンスショーを予定しているボニ♡ボニーというのも、そのジムのズンバの先生と生徒さん有志で、恐ろしくアグレッシブなお姉様方が40人くらい集まって、1時間ほどを踊り続ける予定(笑)。
——すごく面白いズンバの先生がいるって前に村田さんに聞いたことがありましたけど、それでしたか。
村田:そう、阿倍野でスナックもやってる方。で、そのレッスンがなんとも大衆演劇っぽい感じで。集まってる人もかなり変わった経歴の方が多いみたいで、いつもアゲアゲ超ハッピーなんです。
——30日のライブにはドラァグクイーンのシモーヌ深雪さんも登場。
村田:よくギャラリーにも来てくださるんですよ。うちのビルの向かいで衣装を調達もされるそうで。で、快眠亭アキラと夢コはサイケデリック落語。ちゃんと普通に落語です。
——普通に、の意味がわかりません。
村田:ギターの弾き語りと夢コさんが踊って、やるのは基本的に古典落語という。だから、30日の夜は落語、ベリーダンス、ノイズ、ベリーダンス、シャンソンという並びになります。現代アートを目指してART OSAKAに来る人たちにも、こういう人たちもおるんやなというのを面白がってもらえたらという気持ちもありますね。
——そうやって話を聞いてると、狭くジャンルにとらわれないいろんなものが見られそうで、普段のFUKUGANの活動にも通じてる気がしてきました。
村田:私がごく感覚的にこの人が面白い、この作品が面白いと思ってやってきたギャラリーなので、なかなかうまく説明はできませんけど、おのずといろんなかたちで表現する人が多く集まっているのかもしれません。とにかく、なんかすごいなっていう人たち。
——ART OSAKAの枠組み内のイベント企画としてこれが行われるのもとても意義深いですね。
村田:だといいんですけど。大阪のローカルの紹介として楽しい場にできたら。あとはギャラリーとして儲けるつもりはひとかけらもないけど、なるべく少ない赤字で収まればいいなと。紹介しきれなかった作家もいますけど、それぞれに面白いのでどこかに引っかかるはず。お酒もあるのでぜひ遊びに来てください。

会期:2026年5月28日(木)〜6月1日(月)
会場:クリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地)内 STUDIO PARTITA時間:
5月28日(木)13:00〜19:00
5月29日(金)11:00〜19:00
5月30日(土)11:00〜20:00
5月31日(日)11:00〜20:00
6月1日(月) 11:00〜16:00料金:入場無料 ※一部イベントは有料
展示:池島勘治郎 / 宇加治志帆 /大野雅彦 / CASPER / 栗田咲子 / 佐伯慎亮 / 田中秀和 / 冬木遼太郎 /水内義人
出店:ブルジョンレコード/ レコードあんぐらあ /アルケミーレコード /おしゃれ童子 / Aimal Taylor /フォーエバーレコード /【鏡と窓】レヴェイユ小夢 / 村田酒店名村出張所 ほか
関連イベント
宇加治志帆(パフォーマンス)
日時:5月28日(木)17:00〜18:00
料金:観覧無料
定員:先着10名ほどONI (ポリフォニーワークショップ)
日時:5月29日(金)17:00〜18:30
料金:2,500円 ※観覧のみは無料
予約不要ボニ♡ボニー(ダンス)
日時:5月30日(土)14:00〜15:00
料金:観覧無料
予約不要シモーヌ深雪/ 快眠亭アキラと夢コ/ Hiroco / DESTROMO(大野雅彦) (ライブ)
日時:5月30日(土)open 17:30 start 18:00〜
料金:3,000円
予約不要古谷高治×サハラクミコ(トーク)
日時:5月31日(日)13:00〜
料金:観覧無料
予約不要オシリペンペンズ / KA4U / MeNeM aka ShabuShabu / 水内義人(ライブ)
日時:5月31日(日)start 17:00〜
料金:3,000円
予約不要※5月30日、31日の特典付チケットはFUKUGAN GALLERYとブルジョンレコード等で販売。ART OSAKAのサイトからオンラインでも購入可 https://www.e-tix.jp/artosaka2026/
主催:FUKUGAN GALLERY
共催:ART OSAKA(同時開催・Expanded セクション)
ART OSAKA 2026 Galleriesセクション *ブース形式のセクション
会場:コングレスクエア グラングリーン大阪
住所:大阪市北区大深町5-54 グラングリーン大阪 南館4階
会期:2026年5月29日(金)~5月31日(日)
一般公開 30日(土) 11:00‒19:00 / 31日(日) 11:00‒17:00
ART OSAKA 2026 Expandedセクション *大型作品・インスタレーションに特化したセクション
会場:クリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地) [事務所棟、赤鉄骨、青鉄骨、スタジオパルティッタ]
住所:大阪市住之江区北加賀屋4-1-55
会期:2026年5月28日(木)~6月1日(月)
一般公開:28日(木) 13:00‒19:00 / 29日(金)‒31日(日) 11:00‒19:00 / 6月1日(月) 11:00‒16:00
公式ウェブサイト:https://www.artosaka.jp/2026/jp/
公式インスタグラム:instagram.com/artosaka.jp/
■チケット情報
チケット:https://www.e-tix.jp/artosaka2026/
ART OSAKA チケット:3,000円(オンライン決済)
当日現地払い:3,500円
各セクション券もご用意しております。
*2セクション間では金~日、無料シャトルバスが運行予定です





















