大阪府及び大阪市の文化施策の評価・審査、調査、企画などを行う大阪アーツカウンシルが企画する第7回大阪芸術文化交流シンポジウム「どうする!?これからの大阪の文化芸術! 次世代の視点から」が、2025年2月13日(木)に、こども本の森 中之島にて開催される。
大阪では幅広い文化芸術活動が行われているが、アーティストやアートマネジメント人材が十分に活躍できる環境が整っているとは言いがたく、また若手が意見を発信し、課題を共有して解決に向けた取り組みを行う機会が限られている。今回のシンポジウムは、そうした課題を解決するための一歩として、大阪で活動する若手のアーティストやアートマネジメント人材を招き、大阪の文化芸術の未来に向けたビジョンやアイデアについて語り合う。
また、シンポジウム第1部では、文化政策研究者の片山泰輔が「職業としての文化・芸術 ~活力ある大阪の文化経済確立に向けた基盤形成~ 」と題した基調講演を行い、東京圏への人材集中が進む中で大阪が抱える課題を整理、今後の方向性を展望する。
本企画にかける想いについて、大阪アーツカウンシル統括責任者の宮崎優也に話を聞いた。
宮崎は1988年東京生まれ。高校を卒業と同時に渡米し、オーケストラやオペラ等の現場で活動。11年間の米国における活動から帰国後は、堺シティオペラ一般社団法人のアーティスティックディレクター兼事務局長を経て、2022年に第3期(2022〜25年度)大阪アーツカウンシルの統括責任者に就任した。
Q:今回のシンポジウムでは「次世代の視点から大阪の文化芸術を考える」というテーマが掲げられていますが、このテーマに込めた想いや狙いについて教えてください。
宮崎:大阪を拠点に活動していると、「大阪は文化や芸術に冷たい」という言葉を耳にすることがあると思います。でも実際には、大阪は江戸時代から商人文化の中で「自助」と「互助」の精神を大切にし、多様な芸術文化を育んできた地域でもあります。
ただ、高度経済成長期以降、財政難や新自由主義的な効率化の波を受け、文化芸術への公的支援が大幅に縮小された時期がありました。その影響は、約15年以上経った今もなお、多くの文化芸術関係者の記憶に鮮明に残っているのではないでしょうか。
現在、公的支援や環境整備は少しずつ回復してきており、さまざまな文化施策が行われています。しかし、若手アーティストや新しい表現を担う人材が大阪を離れたり、地域の文化を支える担い手が減少しているという課題は、未だ大きな問題として存在しています。このまま何も手を打たなければ、大阪が培ってきた独自の文化芸術のアイデンティティが失われる恐れがあると思うんです。
だからこそ、今こそ文化芸術の未来について話し合い、具体的なアクションにつなげる必要があると考えています。
2022年度より新体制となった第3期大阪アーツカウンシルは、30~40代の若手メンバーを中心に構成されており、私もその一員として参加しています。未来を見据えた議論の重要性を実感する毎日です。今回のシンポジウムは、次世代の視点から前向きで建設的に語り合う場にしたいという想いで企画しました。
Q:今回のシンポジウムのプログラム構成や、特に注目してほしいセッションについて教えてください。また、どのような人に参加してほしいですか?
宮崎:どのセッションにもそれぞれ思い入れがあるので、特にこれと限定するのは難しいのですが…やはり、第2部の登壇者を交えてのディスカッションが、このシンポジウムの肝となるセッションだと思います。
実はこのシンポジウムの準備にあたり、令和6年度の大阪アーツカウンシルの調査として、舞台芸術(クラシック音楽・バレエ)、演劇、伝統芸能、現代美術、ソーシャルアートという5つの表現分野について、グループインタビューを実施しました。それぞれの分野で2~3名の対象者を招き、現場の課題や可能性についてじっくりお話を伺いました。今回の5名の登壇者は、そのグループを代表する方々です。
インタビューでの議論を基にしつつ、登壇者が自ら考え、行動し、自助努力をどう進めるべきか。そして、それを支えるためにどのような支援が必要なのかを深掘りしていきます。最終的には、議論を「話し合い」で終わらせるのではなく、具体的なアクションプランにまで落とし込めたらと考えています。
どのような人に参加してほしいかと言うと、大阪の文化芸術に少しでも関心を持っているすべての方々です。プロフェッショナルはもちろん、これから文化芸術の現場に関わりたいと思っている学生さんや、日常的に文化に触れるのが好きな市民の皆さんにもぜひ来ていただきたいですね!
Q:宮崎さんが統括責任者に就任されて3年弱が経ちました。この間の大阪の文化芸術の状況、文化政策をどのように捉えていますか?また、10年後、20年後の大阪の文化芸術のために、今何が必要/課題と考えますか?
宮崎:大きな政治的変化がない限り、文化政策は急激に変わるものではありません。この数年も、そうした大きな変化は見られなかったと感じています。
私が統括責任者に就任した2022年4月は、まだコロナ禍の影響が色濃く残る時期でした。そして、感染症法上の「5類感染症」への移行が実現したのは2023年5月です。コロナ禍で文化芸術への支援策は多くの自治体で実施されましたが、それらはあくまで「応急処置」的なものでした。コロナ禍で浮き彫りになった課題が多かったにもかかわらず、それが文化政策の抜本的な改善にはつながらなかった点は課題だったと思います。
現在は、2025年大阪・関西万博に向けた大型の文化事業が動き、来阪者を文化芸術で迎え入れる取り組みが進んでいます。それはそれで良いと思いますが、一方で大阪で活動するアーティストや文化芸術関係者を「労働者」として捉え、そのような方々の環境整備を進める視点がまだ弱いのではと感じています。文化芸術を「活動」として捉えるだけでなく、そこに従事する人々を労働者として見て、支援する仕組みが必要です。
10年後、20年後を見据えると、大阪の文化芸術を支える「人」の育成と働く環境整備が、最大の課題になると思います。公共事業としてその基盤を整えることが、未来への投資につながるはずです。
Q:最後に一言どうぞ。
宮崎:今回のシンポジウムは、安藤忠雄氏設計の「こども本の森 中之島」という、創造性と自由な発想を象徴する空間で開催されます。この特別な場所で、大阪の文化芸術の未来を前向きに議論し、新たな可能性を探るきっかけになればと願っています。
大阪の文化芸術を支えるのは、現場で努力する人々、そして関心を持つ市民の皆さんの力です。この場を通じて、新しいアイデアとつながりが生まれることを心から期待しています!
第7回大阪芸術文化交流シンポジウム「どうする!?これからの大阪の文化芸術! 次世代の視点から」
日時:2025年2月13日(木)19:00〜21:00(開場及び受付開始 18:30)
会場:こども本の森 中之島
プログラム:
第1部(19:00~19:30)
「職業としての文化・芸術 ~活力ある大阪の文化経済確立に向けた基盤形成~ 」
登壇者: 片山 泰輔 (大阪府市文化振興会議委員、青山学院大学総合文化政策学部教授)
市民・府民が文化を消費する機会を充実させること自体については、どこかから連れてきたアーティストなどによる「輸入」の文化だけでも実現可能かもしれません。しかし、国内外に向けて大阪の魅力を発信していくためには、大阪が自ら文化を創造していくことが重要であり、それを担うアーティストやプロデューサーなどの人材が不可欠となります。本講演では、東京圏への人材集中が進む中で大阪が抱える課題を整理し、今後の方向性を展望します。第2部(19:30~20:30)
「どうする!?これからの大阪の文化芸術! ~次世代の視点から~」
進行:宮崎 優也(大阪アーツカウンシル統括責任者/指揮者・プロデューサー)、北村 智子(大阪アーツカウンシル委員/アートアドミニストレーター)
登壇者:奥村 啓吾(オペラ演出家)、キャメロン 瀬藤 謙友(ドラマトゥルク/劇場職員)、下浦 萌香(アーティスト)、常盤 成紀(公益財団法人堺市文化振興財団 事業課 事業係長)、向平 美希 (一般社団法人関西伝統芸能女流振興会 代表理事)
大阪を中心に活動する若手のアーティストやアートマネジメント人材が、次世代の視点から、大阪の芸術文化の未来を描くためのビジョンを共有します。 また、持続可能な文化芸術活動の基盤を構築するための具体的なアイデアなどを議論し、大阪の文化政策に反映させるための新しい視点を模索します。第3部(20:30~21:00)
質疑応答定員:50名(無料・要申込・先着順)
※申込はこちらから。申込締切は2月12日(水)17:00。ただし定員に達した時点で申し込みの受付を終了問合:
【申し込みに関する問合先】
府民お問合わせセンター「大阪アーツカウンシル大阪芸術文化交流シンポジウム」係
電話:06-6910-8001(平日9:00〜18:00)【シンポジウムに関する問合先】
大阪アーツカウンシル事務局(大阪府府民文化部文化・スポーツ室文化課)
電話:06-6210-9305(平日9:00〜18:00)
大阪市北区中之島1-1-28