
大阪を拠点に海外戯曲の翻訳上演やギリシア古典劇の上演などを行う、劇作家・演出家の田中孝弥率いる劇団・清流劇場の新作公演『キュクロプス-貧民街の怪物』が、大阪では2025年10月16日(木)〜19日(日)に、天王寺の一心寺シアター倶楽にて行われる。
本作は、ギリシア悲劇詩人・エウリピデスの唯一現存するサテュロス劇『キュクロプス』を、1961年の武庫川河川敷(兵庫県尼崎市)を舞台に再構築した作品。
善と悪の間 introduction
オデュッセウス(ギリシアの英雄)は本当に「正義の人」なのか?
キュクロプス(一つ目の人喰い怪物)はそんなに「恐ろしい者」なのか?
古代ギリシアのサテュロス劇『キュクロプス』を読んだとき、私はそう問いかけられているように感じた。
この物語を現代に上演するための手掛かり──今も昔も変わらず「人が心に抱え、拭いきれないもの」は何か。
オデュッセウスは、国家を背負いながら、自己保身と謀略を繰り返す政治家に見えた。
キュクロプスは、異形の肉体を持ち他者と隔てられながらも、蛮地に根を張り、懸命に生きる人に見えた。
そのとき、頭に浮かんだのは、私の故郷・尼崎の武庫川河川敷でかつて暮らしていた人たちのことだ。
行政によって強制的に立ち退かされ、「なかったこと」にされた人たち。
都市の周縁に暮らしながら、「町の人たちとは違うニオイのする者」とされ続けた人たち。
その姿はまさに「現代のキュクロプス」ではないか。
私は、オデュッセウスとキュクロプスを、「行政」と「見えない存在にされた者」の対峙として描きたい。
そして、この二人もそれぞれ、心の中は善と悪の間で揺れ動きせめぎ合う──その姿を通して、人が心に抱え、拭いきれない「業(ごう)」を浮かび上がらせたい。田中孝弥
あらすじ
1961年、尼崎・武庫川河川敷。屋根に「一つ目」が描かれたバラックが建っている。ここには長年、貧しい人々が住み着き、クズ鉄屋の親方(キュクロプス)を中心に暮らしていた。だが、県は「河川敷の美化と防災」を名目に住民の立ち退きとバラックの取り壊しを強行しようとしている。
台風が襲来した夜、親方夫婦とその家族は、バラックが流されないよう懸命に備えている。その姿を、県の土木建築部長(オデュッセウス)とその部下たちが、橋のたもとから眺めている。部長は「強制代執行」の責任者であり、河川敷住民を立ち退かせる役割を帯びている。部長らは身分を偽り、河川調査員と土木技師として、親方のバラックを訪れる。台風による浸水被害から逃れるため、助けを求めにきたという口実である。親方の妻は、酒に目のない義弟が「部長らの用意した酒」に手を出してしまったことから、渋々、彼らの滞在を受け入れる。
しばらくのち、作業場から帰ってきた親方は、部長らを「代執行」の関係者ではないかと怪しむ。部長は懸命に「河川調査が目的」と釈明するが、親方は彼らの言葉を信用しない。
日時:
2025年
10月16日(木) 19:00
10月17日(金) 14:00/19:00
10月18日(土) 14:00 ★
10月19日(日) 14:00
※各回、開演5分前から田中孝弥によるビフォアトークあり
※★の回は、終演後にアフタートークあり
司会:小尾絵生(神戸新聞文化部記者)
登壇者:丹下和彦(大阪市立大学名誉教授)、田中孝弥会場:一心寺シアター倶楽
料金(税込):前売4,800円、当日5,300円/U-22、ペアチケット等割引券あり
※詳細は公式サイトにて原作:エウリピデス『キュクロプス』
上演台本・演出:田中孝弥
原作翻訳:丹下和彦(大阪市立大学名誉教授・古代ギリシア文学者)出演:髙口真吾、アンディ岸本、日永貴子、八田麻住(マスミノソラ)、曽木亜古弥、辻登志夫(tsujitsumaぷろでゅ~す)、大対源、山本香織(道頓堀セレブ)
音楽・演奏:仙波宏文鑑賞サポート
※事前台本貸出(要事前申し込み)
オンラインで上演台本の事前貸出ができます。
ご希望の方は予約の際、備考欄に「上演台本事前貸出希望」とご記入ください。
来場1週間前に清流劇場よりメールでご案内します。
※車いすご利用の方、お身体の都合で座席にご希望がある方
ご予約の際、座席の希望を備考欄にご記入ください。
(予約時期によっては、ご希望に添えない場合があります)
※トリガーアラートについて
一部、暴力的表現があります。
観劇に関して確認が必要なお客様は、メールで清流劇場へお問い合わせください。※東京公演は10月23日(木)から26日(日)まで、駅前劇場(東京都世田谷区北沢2-11-8)にて。
※11月28日(金)~12月18日(木)に映像配信予定。視聴料金:3,000円(税込)問合:清流劇場
大阪市天王寺区逢阪2-6-13 B1F